人材育成

【ダイハツ工業】インターンシップにAI×小型ロボットアームを活用した理由とは

国内有数の自動車メーカーであるダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ工業)は、2020年から本格的に全社でAIの導入を開始しています。

同社のデータサイエンスグループではデータサイエンスの業務体験インターンシップを実施するにあたり、
・仕事は大変なことも多いが、その楽しさも体験してほしい
・残りの学生生活をどう過ごしていくか、自分に必要なものを考えるきっかけにしてほしい
・AIを業務に適用させることの難しさや、ダイハツ工業がどのようにAIの活用を進めているかを知ってもらいたい
という思いから、AIや小型ロボットアームを活用したそうです。ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 DX推進室 DX領域 データサイエンスグループ 吉田 裕貴氏にインターンシップとAIの活用についてお話を伺いました。

インターンシップで画像分類と小型ロボットアームを連携させた自動仕分けを実施

ダイハツ工業は2022年2月23~25日の3日間で、小型ロボットアームを活用した、データサイエンスに関する業務体験インターンシップを行いました。
インターンシップでは学生1人に1台ずつの小型ロボットアームを提供し、「AIによる市販チョコ5種類の画像分類」や「小型ロボットアームと連携させた市販チョコ5種類の自動仕分け」を行ったそうです。

ダイハツ工業_1.jpg

インターンシップの主な内容

【AIによる市販チョコ5種類の画像分類】

「人の手による仕分けではミスが発生しやすい。ミスが起こる度に仕分け内容を再確認することが必要となり、無駄な工程が生じている」という仮想の課題を提示して、その解決に向けて、工場の現場での実装を想定したシステムを制作しました。
・上記の課題に対して改善方法(課題設定)をディスカッション
・データ取得の際、どのようにデータを取得すべきかディスカッション(環境や光の当たり具合など)
・ディスカッション内容をもとに、カメラの位置の調整等を行いながらデータを取得
・取得したデータを学習
・実際に分類ができるかを確認し、テストデータで予測

【小型ロボットアームと連携させた市販チョコ5種類の自動仕分け】

・積み木を使って小型ロボットアームの動かし方を実践(Pythonプログラムで制御)
・積み木を3個積み上げるなど、小型ロボットアームの動かし方を楽しみながら学ぶ
・指定した場所への移動(各自が設定した場所へ運搬するプログラムを作成)
・AIによる画像分類後に「対象物をどこへ動かすか」などを試行錯誤しながら設定し、実行

 

【実際の自動仕分けの様子】

発表会などを除くとインターンシップに参加した学生が実際に作業したのは2日間となっており、1日目にデータ設定や小型ロボットアームを動かす体験、2日目に画像分類と小型ロボットアームの動きを組み合わせた自動仕分けシステムの制作に取り組んだそうです。
今回のインターンシップには数十名の応募者の中から面接を経て選ばれた大学3年生2名が参加し、そのうち1名の学生はPythonに関して初心者でしたが、事前に2週間かけてPythonを学んでから参加したそうです。

インターンシップ実施にあたり工夫した点や学生の反応

インターンシップを実施する際に工夫した点について吉田氏に伺いました。
吉田氏:
インターンシップでは学生にとにかく楽しんでもらうことを重視しました。学生同士は初対面だったので、場を和ませるために「これについてどう思いますか?」と学生に尋ね、意見を引き出すなど、学生が話しやすい環境作りを心がけました。
画像分類を行うにあたりテーマの選定やデータセットの準備、実装までを短期間で行うにはデータサイエンスの経験がどうしても必要となりますが、話しやすい環境作りを行うことで初対面の学生同士がお互いにサポートし合えるインターンシップとなりました。
またこのインターンシップを通して学生にモノづくりの達成感を味わってもらいたく、「AIと小型ロボットアームを使った自動仕分けの製作」が絶対に成功するように、事前準備には2週間をかけました。
間違いがないようにスクリプトを作り込み、学習データの収集方法やAIと小型ロボットアームの連携を考えるほか、工場の方に頼んでカメラ台を作成してもらったりもしました。

実際にインターンシップに参加した学生の反応について吉田氏は次のように話しました。
吉田氏:
学生は小型ロボットアームが動いた瞬間に「ちゃんと動いた!」という反応をしていて、自分の書いたプログラムで実際にロボットが動く様子を見て、プログラムを書くことが楽しくなっていく様子でした。データ取得から小型ロボットアームの操作、自動仕分けの実施までの一連のプログラムが終わったときの、達成感に満ちた笑顔が印象的でした。
学生2名でのインターンシップだったため、何かうまくいかないことがあれば学生同士で教え合うなど、チームとして協力して活動する場面もあり、より実際のビジネスに近いインターンシップになったと思います。
「仕事は大変な時もあるけど楽しい!」と学生に体験してもらうことを今回のインターンシップの目的の1つにしていたのですが、試行錯誤しながらコードを書き、それがうまく動いたときには学生に大変さと楽しさを実感してもらえたのではないかと思っています。

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AI×小型ロボットアームで、より実務的なインターンシップへ

今回、AIと小型ロボットアームを連携させたインターンシップを実施したきっかけについてお伺いしました。
吉田氏:
昨年(2021年)に初めてインターンシップの受け入れを行い、
・YOLO-v3による工場部品等の物体検知、Raspberry Piへの実装
・ダイハツ工業社員限定のKaggle(※)コミュニティコンペへの参加
 (※)Kaggleとは、世界中の機械学習やデータサイエンスに携わっている方が集まるコミュニティで、
企業などの組織とデータ分析のプロフェッショナルな方々とを繋げるプラットフォームです。

といった内容を実施しました。
しかし私たちの準備不足もありインターンシップ内でYOLO-v3による物体認識がうまくいかなかったことから、学生に達成感を感じてもらえず、インターンシップの満足度が少し低くなってしまったのではないかと感じていました。
そこで今回のインターンシップでは「ロボット制御とAIを同時に体験できると面白いかもしれない」と考え、安価で迅速にロボットアームとAIの連携を実現できる小型ロボットアームを活用しました。

また吉田氏はAIのビジネス適用について次のように述べています。
吉田氏:
AI単体でできることはあまりなく、AIはロボットや他の設備との連携があってこそビジネスに適用できると考えています。小型ロボットアームとAIの連携を学生に体験してもらうことで、ダイハツ工業が現在進めている『AI技術の業務適用』の難しさを伝えられ、より実態に即した、実務的なインターンシップを実施することができました。

小型ロボットアームをインターンシップで活用する理由とは

吉田氏:
AIを活用する際、必ずしもPythonを使うことができる必要はありませんが、Pythonの知識があるとできることの幅が広がります。そのため、今回のデータサイエンス体験インターンシップに参加したPython初学者の学生に対しても、Pythonを学ぶハードルを下げて、取り組みやすくしたいという思いがありました。
小型ロボットアームは、プログラムを少し書くだけでアームを動かすことができ、プログラムの結果が目で見て分かりやすく、楽しいと感じてもらうことができます。その点で、「プログラムは簡単に書けるものだ」「地道にプログラムを書いていけば完成形に近づいていく」という感覚を理解してもらうために、小型ロボットアームは最適だと思いました。
また、ダイハツ工業の工場では自動車が完成するまでの過程に多くのロボットアームが関与しているため、インターンシップに参加した学生にはぜひロボットアームの操作を体験してほしいと考えています。しかし、現場で常に稼働しているロボットアームをインターンシップ内で動かすには生産ラインを止める必要があり、現実的ではありません。
そこで、現場へいかずともダイハツ工業の業務をイメージしやすい方法を検討し、工場内のロボットアームを模擬的に動かせる小型ロボットアームを選びました。

今後は社内教育や工場内への展開を検討

吉田氏:
今回のインターンシップは、
参加した学生に「楽しんでもらう」「ダイハツ工業を知ってもらう」「残りの学生生活で自身に必要なものを見つけてもらう」「卒業論文テーマにしてもらう」
ダイハツ工業にとっては「全社AI研修をオンラインで実施するための試行」「小型ロボットアーム実装に向けた勉強」
という位置づけで実施していました。
今後はインターンシップで得た知見を活かしてダイハツ工業の社内教育に横展開していきたいと思っています。
また、小型ロボットアームを工場内の仕分け作業や部品供給、キズの検知などに活用できないかを、現在検討中です。

企業プロフィール

企業名 ダイハツ工業株式会社(DAIHATSU MOTOR CO., LTD.)
主な事業内容 自動車の製造および販売
従業員数 13,033名(2021年4月1日時点)
企業サイト https://www.daihatsu.co.jp/top.htm

講師プロフィール

ダイハツ工業_吉田さん.jpg
名前 吉田 裕貴
経歴 2017年4月にダイハツへ入社。入社から4年間はエンジンの先行開発を行っており、
5年目からデータサイエンスグループへ異動し、今現在まで社内のAI活用推進を進めている。
主な業務内容 自社開発部門全般のAI活用推進

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